2019年5月28日、川崎市登戸で引きこもりの50代の男が、スクールバスを待ってた登校途中の小学生や保護者を次々に殺傷した事件が発生しました。
また、2019年6月1日には元農林水産省事務次官を勤めた70代父親が、引きこもり40代の長男を殺害する事件が起きました。
原因は、川崎市登戸での殺傷事件を受けて犯行に及んだと報道されています。
このように事件がらみの報道で、「中高年の引きこもり」がクローズアップされていますが、「ひきこもり=危険人物」では決してありません。
今後は、このような痛ましい事件に発展しないよう、国・地域・コミュニティの支援が求められているのです。
事件以前から、8050問題とし取り上げられ、中高年の引きこもりについて対策が検討されていました。
2019年3月、内閣府の調査によると40~64歳の中高年のの引きこもり数が61.3万人とのこと、政府は新しい社会問題としての見解を発表しています。
当記事では、8050問題と中高年の引きこもりになった原因についてシェアしていきます。
8050問題とは
「8050問題」とは、50代の引きこもりの子供を80代の高齢者の親が養っている状態で、親の高齢化に伴い病気や介護の問題が生じ、親が子供の面倒を見れなくなり共倒れになったり、前述の殺傷事件のように子供や親が将来を悲観して事件を起こしかねない社会問題です。
筆者も二人の子供がいますが、家を出て自立しているように見えても、独身のせいか親への依存が高いように感じます。
退職などの理由で、実家へ戻ることになったりすると引きこもりになる可能性もあるでしょう。
そうすると、10数年後には「8050問題」になってしまいます。
このように、人ごとではなく身近にある問題だと思うのです。
「8050問題」になってから相談するのではなく、そうならないような地域の支援が必要だと強く思っています。
中高年の引きこもりになった原因は
2019年3月19日に内閣府が、40歳から64歳までの自宅に半年以上引きこもっている、いわゆる「ひきこもり」の調査で61.3万人いると前述しました。
引きこもりの定義には、
・自室からほとんど出ない
・自室から出ても、自宅からほとんど出ない
・普段は自宅にいるが、近所のコンビニなどには外出する。
という「狭義の引きこもり」と
・普段は家にいるが、趣味に関する用事のときは外出する
という「広義のひきこもり」に分けられます。
内閣府の調査は、「狭義の引きこもり」と「広義のひきこもり」状態を6ヶ月以上続く場合と定義して調査されています。
この調査での「引きこもり」になった年齢の調査データが次の図です。
引きこもりになった年齢は、60歳〜64歳が17%と最も多く、25歳〜29歳、20歳〜24歳と20代が続きます。
40歳以上で「引きこもり」になった人が、57%と5割以上ですね。中年に達する年齢での「引きこもり」は、仕事や人間関係が原因していると予想されます。
そして、20代の若い時期から引きこもりになった人も少なくなく、調査では7年以上引きこもり状態の人が5割を超えるようです。
引きこもりになったきっかけに関する調査では、
引きこもりになったきっかけ (複数回答) |
|
---|---|
退職した | 36.2% |
人間関係がうまくいかなかった | 21.3% |
病気 | 21.3% |
職場になじめなかった | 19.1% |
就職活動がうまくいかなかった | 6.4% |
きっかけは「退職」が最も多く、「人間関係」や「病気」の原因が続きます。
いわゆる就職氷河期の年代との関連もあるのでしょうか。
その他の調査結果として、家計を支えているのは父母→34%、自分自身→30%、配偶者→17%で、生活保護→9%で、親が引きこもりの面倒を見ているケースがもっとも多く、「8050問題」が深刻なのもデータからも判断できますね。
中高年の引きこもり支援
「引きこもり支援 」には、国や県が運営する公的なものから、民間団体、個人までいろいろな機関があるようです。
国や県が運営する公的機関の「引きこもり支援 」のほとんどは、35歳〜39歳までの年齢制限があります。
よって、中高年の「引きこもり支援」は少なく、十分な支援は行われていないのが実情のようです。
国の施策として、平成21年度から「ひきこもり対策推進事業」として「ひきこもり地域支援センター 」を都道府県、指定都市に設置し運営しています。
「引きこもり」に特化した相談窓口を設置し、「引きこもり支援コーディネーター 」が相談を受け、家庭訪問などの支援を行い関係機関へ繋ぐ役割をします。
ただし、中高年の引きこもり数が61.3万人、若年層と合わせると優に100万人を超える人数になります。
都道府県や指定都市に設置された「ひきこもり地域支援センター」だけでは、対応は難しいのではと思います。
市町村、地域レベルでの細やかな「引きこもり」支援が必要だと感じます。
まとめ
民間の「引きこもり支援」のたくさんあるようですが、近年、多くのトラブルが報告されています。
民間事業者は事業として行っているわけですから、利益重視になり、本来の支援がおろそかになってしまうのかもしれませんね。
国や地方公共団体にには、今後「中高年の引きこもり支援」を充実していだき、新聞・テレビで連日報道されるような、いたましい事件が起きないよう支援をお願いしたいです。
今後、国会でも「8050問題」をどのように解消していくか議論していただき、早急な対策を打っていただきたいですね。